『14-fourteen』(桜井亜美) [本・漫画]
手に取るまで知らなかったのだが、神戸で起きた酒鬼薔薇事件(たぶん正式名称は違うでしょうが)を題材にした小説だった。
そうか、彼は当時14歳だったんだっけ・・・?
猟奇的事件だとは思ったが、なにせテレビを見ないし、ワイドショーが言うことをおうむ返しに噂するのも好きではないから、細かな情報を得ないままだった。
桜井さんの小説はあくまでフィクションだけど、「ありえるかも知れない背景」を丁寧に描き出していたと思う。それも、主人公に寄り添うような形で。
とはいえ、彼が殺人を犯したことは確かだし、それを庇ったり、「こんな背景があったんじゃ仕方がないよね」と同情しているわけでもないから、「何言ってんだ?」といった苛立ちは感じない。
題材が題材だけに、読んでいて面白いとは思えなかったが、作者の創造力と、平易な表現でありながら鋭い文章がストレートに伝わり、引き込まれて、あっという間に読み終えた。
実在の彼がノートに書いていたという「バイオモドキ神」みたいな、よくわからない世界観も、ちゃんと描かれていて、わかりやすい。ストーリーに破綻がない。
何が彼をそこまで追い詰めたのか。一人の少年が、殺人鬼になっていく過程が丁寧に描かれ、最終的に一つの回答(想像だけれど)が提示される。「ありえるな」と感じさせる終わり方だ。
特にお薦めはしないけれど、読んで損はない一冊だと思う。
ブックオフで105円は良い買い物だったなあ・・・とっておく気はないけれど。
★★★★★★★☆☆☆ 7
ストーリーに破綻がないの?
しかも「よくわからない世界観も、ちゃんと描かれていて、わかりやすい」?
1冊でやめたのはやはり早計だったか、桜井亜美!
バチスタシリ-ズと新宿鮫の後に読んでみようかなあ。
by 玉手箱 (2007-06-05 21:21)