『魚と寝る女』@渋谷ユーロスペース [映画・DVD]
『うつせみ』に続けて、ユーロスペースのギドク・マンダラで鑑賞。
パッケージは幻想的でエロティックに見えるが、結構グロテスクだった。
暴力、セックス、独占的な愛情表現、等々、ギドク監督が熱心に取り組んでいるテーマが、この作品にも色濃く見られる。
そして、ヒロインである女は言葉を話さず、全体的にも、セリフは少なめ。
舞台は霧がたちこめたような湖(池?)、そこで、船を操り、釣り人相手に商売をする孤独な女ヒジン。
美しいはずの女優さんだが、なんだか薄汚れて暗く、不幸をしょいこんでいるように見え、魅力が感じられない。
時折見せる、狂気をおびた表情がとても怖い。
ただ、怖いばかりじゃなくて、状況的には笑える場面もある。
たとえば、想いを寄せている男(ヒョンシク)が、湖に浮かぶ宿泊所(小屋)で売春婦とコトを行おうとすると。
トイレ穴、として使っている場所から、ヒジンが顔を出す。
怖いんだけど、「げ。トイレ穴だよそこ。」と思ってしまうので、ぞくぞくっとは来ない。
よく考えれば、水の中に「している」んだし、その水の中を泳いで来ているんだから、どこだって同じなんだけど。
自殺を図ったヒョンシクを、ヒジンが必死に助けたことで、二人の仲は急接近するが・・・色々なことが悪い方向へと進み、結局は悲劇に。
ヒョンシクは元々殺人犯として追われており、自殺するつもりで湖に来ていた。
けれど、そのことが悲劇につながった、というよりも、ヒジンの独占欲やプライドのなせるわざ、と思えた。
ヒョンシクに想いを寄せる売春婦を拉致し、結果的に殺してしまったり。
あてつけ自殺を図って、ヒョンシクが自殺未遂した時の飲み込んだ「釣り針の塊」をヴァギナに入れたり。
彼が可愛がっている小鳥の籠を、水に放り込んで死なせてしまったり。
ヒジンの行動は、「いっちゃってる」としか思えない。
話全体としては筋が通っているし、ギドク監督は、極端な人物描写によって、強く訴えたいことがあるのだと思うけれど。
私の中に残ったのは、嫌悪感とまではいかないが、苦々しい感覚だったのが残念。
主演女優ソ・ジュンさんの、身体を張った演技に拍手を送り、★1つオマケ。
★★★★★☆☆☆☆☆ 5
<一番心に残ったシーン>
謎が残るラストシーン。
ヒロインはなぜ全裸死体となって、沈みかけたボートの上に横たわっているのか。
自殺なのか、他殺なのか?
表情は「無」に近く見える。苦しそうでもなければ、嬉しそうでもない。
解説を読めばわかるのかも知れないけれど、謎のままにしておきたい気も。
<シネマトピックスの作品紹介ページ>
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=1856
これも、近づけなかった世界です。また頭の片隅に保存。
by らいみ (2007-05-14 21:06)
「うつせみ」よりかなりどぎつかったです。
嫌じゃなかったけど、しんどかった。
by 岩飛筆銀 (2007-05-16 12:32)