『うつせみ』@渋谷ユーロスペース [映画・DVD]
- 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
- 発売日: 2006/08/25
- メディア: DVD
すでにDVD化されていますが。
渋谷ユーロスペースで、スーパーギドクマンダラ開催中なので、行ってきた。
多くの人が「不思議な感じ」と評するのがよくわかった。
私にとっても、不思議な雰囲気の作品だった。
話はよくわからないし、共感もできないのだが・・・言葉に頼らない、主人公テソクと、最終的には彼と恋におちる人妻ソナが共有する時間の流れが「なんだかいいなあ」と思えて。
学生時代、ゴダールの映画(『気狂いピエロ』だったと思う)を最初に観た時に感じた感覚に近い。
よくわかんないけど、作品の雰囲気そのものが、心の奥深くに、ひたひたと沁みてくる感覚。
キモチイイ。
キム・ギドク監督作品を観たのは2作目だけど、モチーフの使い方が上手だなと思った。
今回は、「写真」がその役割を果たしていたように思う。
テソクは、留守宅を探しては、住人が帰ってくるまで、そこで普通に生活するという日々を送っているのだけれど(家宅侵入罪ですが、金品やモノを盗むわけではなく、壊れている時計やラジオや体重計を直してあげたりもしている)暮らした家で、必ず写真を撮る。
住人たちの写真があれば、それと一緒に。
夫によって、「かごの鳥」のような生活を強いられている(らしい)ソナの家には、彼女の大きなポートレートが飾ってあり、彼女がそれを見つめているシーンもある。
彼らがともに時間を過ごす、留守宅の一つに写真家の家があり、そこにも彼女のポートレートが飾ってある。彼女はそれを切り張りして、分解してしまう、等々。
それから、「存在の不確かさ」が重要なキーになっていると思うのだけど、それは前に観てよくわからなかった『絶対の愛』にも通じているなと思った。
ちょっとした手違い(誤解?まあ、家宅侵入罪ではありますが)で投獄された主人公は、牢獄の中で、「自分の存在を見えなくする」とでもいうような技術?を身につける。
釈放後、彼はソナとともに巡った家々を訪ねるのだが、住人たちは皆「気配」は感じるものの、姿を見ることができない。
そして、彼はとうとうソナの家に・・・彼女にだけは、彼の姿が見える。
ギドク監督が何を伝えたかったのか、を、あれこれ想像してみるのも悪くないけれど、それよりも、「よーわからん」と言いながら、ただ、この作品の世界にたゆたっていたいな、と感じた。
<一番心に残ったシーン>
二人が一緒に家々の扉にちらしを貼り付けていくシーン。
何度か繰り返される。
立派な家並みの街だったり、ぼろぼろの団地みたいなところだったり、瀟洒なマンションだったりと、場所は変化するが、その単純な動きの繰り返しが良い。
こういう単純な、けれども一緒に行動することで、言葉はかわさなくても「情」が生まれ育っていくんじゃないかなあと思えて。
(夜、ちらしが残っている家が留守宅ってことで、彼らはその家でしばしの時を過ごす、最初は主人公が一人でそれをやっていて、人妻を連れ出してからは、二人でその作業をするわけ)
<シネマトピックスの作品紹介ページ>http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=5341
不思議そうな世界。ちょっぴり気になります。
岩飛さんとは、今までにも、きっとどこかですれ違ってますね。
by らいみ (2007-05-05 10:22)
うん。不思議な作品だわ。
でもなにやら設定が面白い。
住人がいない家で彼らの「痕跡」と暮らす?
ある意味非常にリアリティを感じる。
今そこにいないことの存在感。
by 玉手箱 (2007-05-05 21:48)
>らいみさん
キモチイイ不思議世界でした。気持ち悪いのもあるんだけどねー。
絶対ニアミスしてると思います。
いつの日か、銀座木村屋でお茶したいです。
>玉手箱さん
言葉が足りなくて、うまく言い表せないのですが。
監督が伝えたいことは受け取れた気がするんです。
「存在の不確かさ」みたいなもの。
足りない部分をインタビュー記事などで補いたいと思います。
by 岩飛筆銀 (2007-05-06 01:26)